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7.1 荷重倍数の設定
機体がプラットホームを出た時点で十分な対気速度を得ることができれば、そのまま定常飛行に入ることができる。しかし、十分な対気速度に達していない場合は、機体はいったん降下し、十分な速度を得た段階で引き起こし操作を行う。荷重倍数nは引き起こし終了時の最下点において最大値をとる。機体重量をW、速度をVとすると、垂直方向の力の釣り合いを考えて、
begin{equation}
L = W + frac{WV^2}{gr}
end{equation}
荷重倍数nは、
begin{equation}
n = frac{L}{W} = 1+frac{v^2}{gr}
end{equation}
と表される。引き起こし速度を経験的に9m/sと仮定し、引き起こし半径rを変化させて荷重倍数nを計算してみる。
引き起こし半径r(m) | 荷重倍数n |
10 | 1.83 |
9 | 1.92 |
8 | 2.03 |
7 | 2.18 |
6 | 2.38 |
5 | 2.65 |
引き起こし半径の限界を6mと定め、荷重倍数はn=2.38として設計する。大会時に想定される運動には十分対処できると思われる。
7.2 荷重分布
空力設計の章で求めたCl分布および主翼の重量分布より、主翼の荷重分布を求めた。
7.3 主桁位置
主桁の位置は、主桁位置と風圧中心とのずれによる捩りモーメントを考慮して決める必要がある。桁自体の捩り剛性を上げることはもちろんであるが、捩りモーメント自体を小さくすることも当然重要だからである。 風圧中心位置は
C.P. = 0.25 – CM / CL
で求まる。DAE11の迎角と風圧中心の関係を以下に示す。風圧中心は、低迎角時にはかなり後方に、定常飛行時の迎角(5~7度)で風圧中心はおおよそ35%~36%に位置する。いずれにせよ、失速角以下では風圧中心位置は約35%より後方にあることが分かる。
主桁の位置が風圧中心よりも前方にあれば主翼には捩り下げのモーメントがはたらき、後方にあれば捩り上げのモーメントがはたらく。主桁を前方にもって行き過ぎると、常に大きな捩り下げのモーメントがはたらき、特に低迎角時にきつくなる。主桁を後方にもって行き過ぎると、主翼が捩り上がって翼端失速につながり危険である。以上のことを考慮して、主桁位置は35%とする。また、風圧中心が最も前方に来ても35%を若干下回る程度であり、大きな捩り上げのモーメントがはたらく心配はない。通常は捩り下げのモーメントが働いているが、定常状態では十分小さくなっている。
7.4 桁配置
主翼の桁は全部で9本のカーボンパイプから構成される。パイプのスペックは以下の通りである。
中央翼 | 内翼 | 外翼 | 最外翼 | 翼端 | |
長さ[mm] | 1800 | 5200 | 4400 | 4200 | 600 |
内径[mm] | 70 | 76-65 | 69-49 | 55-37 | 20 |
肉厚[mm] | 2.0 | 1.0 | 1.0 | 0.6 | 0.6 |
繊維 | HR40 | HR40 | HR40 | HR40 | HR40 |
本数 | 1 | 2 | 2 | 2 | 2 |
パイプの積層構成から、縦弾性係数および横弾性係数を以下のように見積もった。以下の計算にはこの値を用いる。
E = 10000 kg/mm2
G = 2000 kg/mm2
重なり部分は全て200mmとしてつなぎ合わせる。オス側のパイプには、パイプがつぶれないように発泡ウレタンを詰める。また、T曲げ対策として、リヤスパーを採用する。リヤスパーには内径約20mmのパイプを用いる。桁配置は下図のようになる。
7.5 強度計算
主翼を主桁のみの1本の梁として、主翼のたわみを計算し強度を確認した。なお、主翼の中央から7.8mの位置にワイヤーを張り、ワイヤー取付部で主翼が150mmたわむようにワイヤーの長さを設定する。
また、張線をつけることで生じる圧縮力について計算すると、張線取り付け部において、軸圧縮力Nは121.3kgfである。このとき圧縮応力は、断面二次モーメントI、断面積A、外径Dとして
σ=0.5 M × D / I + N / A = 305 [MPa]
荷重倍数をn = 2.38として、
σ = 725.9 [MPa] < 800 [MPa]
となり、許容応力内であるので、桁の強度は十分である。
7.6 捩り
風圧中心位置が37%のときの主翼の捩り角を計算すると下図のようになる。捩り角は翼端で1.2度程度と十分小さいことが分かる。計算では、捩りは主桁のみで受け持つとした。実際にはリヤスパーなどもあるので、捩り角はこの計算よりも小さくなるはずである。
7.7 T曲げ
揚力が10度だけ前に傾いている状態における主翼の前方への変位を有限要素法で計算すると以下のようになった。変形は問題にならないレベルである。
7.8 リブ
リブは厚さ5mmのスタイロフォームで製作する。剛性を出すため周囲には厚さ1mmのバルサを接着する。後縁は強度、剛性が不足しないようにバルサで補強する。リブ間隔は、中央翼、内翼、最外翼は200mm弱、飛行時の翼のたわみの曲率が大きい外翼は翼上面の変形を抑えるため約130mmとする。
7.9 組み立て
機体輸送時には中央翼、内翼、外翼、最外翼に7分割して運ぶ。翼端部は最外翼に接着してあり、運ぶときも一体である。分割部には主桁、リヤスパーそれぞれに金具が接着してあり(最外翼は主桁のみ)、隣り合う翼をボルトとナットで遊びが生じないように固定できる。ナットは飛行中に緩むことのないようにナイロンナットを用いる。