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6.1 主翼
6.1.1 主翼面積の決定
begin{equation}
ScosGamma = frac{2W}{rho C_L V^2}
end{equation}
として次式から主翼面積を決定する。
機体重量 W = 100 (kgf)
空気密度 ρ = 0.119 (kgf・s2/m4)
揚力係数 CL = 1.1
上反角 Γ = 10 (deg)
若干の余裕をみて主翼面積 S = 28.0 (m2) として製作することにする。
6.1.2 主翼平面形の決定
主翼の平面形は以下の事項を考慮して決定する必要がある。
(1)循環分布ができるだけ楕円分布に近い 誘導抵抗係数は次式で表される。
begin{equation}
C_{D_i} = frac{{C_L}^2}{pi e AR}
end{equation}
飛行効率 e は循環分布が楕円分布のときに最大値 e = 1 をとり、楕円分布からずれると e < 1 となる。したがって、循環分布はできるだけ楕円分布に近いことが望ましい。
(2)翼端失速が起こりにくい 翼端失速というのは、断面揚力係数 Cl が翼の途中で最大値を取ると、迎角が増えたときにそこから失速が始まるというものである。翼端失速が生じるとロール安定が損なわれてしまい、人力機では回復はほぼ不可能である。翼端失速を生じさせないために、 Cl の最大値がなるべく翼根に来るように設計する。
(3)翼端にかけて荷重を減らす 翼端寄りに大きな荷重を持ってくると翼根での曲げモーメントが大きくなってしまう。この問題は、テーパをつけることで回避する。しかし、テーパをつけすぎると上記の翼端失速が起こりやすくなることにも注意しなければならない。
(4)製作が容易であること 設計を確実に実現するために重要な要素である。具体的には直線的なテーパ、捩り下げなし等が挙げられる。
6.1.3 主翼平面形の最適化
上述した(1)を実現するために、主翼接合部ごとのコード長を変化させながら、循環の楕円分布とのずれが最小となる平面形を求めるプログラムを作成した。プログラムリストは付録Bに掲載してある。循環分布の計算にはMulthoppの方法(『航空機設計論』(山名正夫・中口博著、養賢堂)付録B6.6を参照)を用いた。 目指す循環分布は
begin{equation}
Gamma_{opt} = Gamma^ast sqrt{1-(frac{2y}{b})^2}
end{equation}
で定める。ただし、Γ*は揚力の拘束条件から以下の式を満たすように決定する。
begin{eqnarray}
L &=& 2int_0^{b/2} frac{1}{2}rho cV^2 C_l dy \
C_l &=& frac{2Gamma^ast}{cV}sqrt{1-(frac{2y}{b})^2} \
L &=& W
end{eqnarray}
各接合部ごとのコード長を翼面積一定の拘束条件の元で変化させながら楕円分布からのずれを表す評価関数Zが最小になる平面形を求める。ここで評価関数 Z は以下のように定義する。
begin{equation}
Z = int_0^{b/2} (Gamma – Gamma^ast)^2 dy
end{equation}
製作の関係上、 y = 5700 (mm) の接合部からテーパを開始することとする。また、あまりテーパをつけすぎると翼端失速しやすくなるので、翼端のコード長は650mm以上に制約する。平面形は以下のように決定した。
6.1.4 断面揚力係数分布
断面揚力係数Clの分布は次のようになった。グラフからも分かるようにClの最大値は翼根にきており、翼端失速の危険性は少ないと考えられる。
6.2 水平尾翼
6.2.1 面積
水平尾翼容積は次のように表される。
begin{equation}
V_h =S_h l_h/(bar{c}S)
end{equation}
lh : テールモーメントアーム
Sh : 水平尾翼面積
S : 主翼面積
c : 主翼平均空力翼弦
過去の機体のデータからVh=0.3と決定した。テールモーメントアームlh=4.4(m)として Sh = 1.89 (m2) となる。
6.2.2 翼形
翼形は昨年同様NACA0009を用いることにする。採用の理由は、昨年までの経験があり製作が容易であること、構造部材が入るだけの十分な翼厚があることである。NACA0009の2次元翼データは付録Aに収録した。
6.2.3 平面形
スパン2.9(m)のテーパ翼とする。
6.2.4 安定性
後述する安定微係数の計算より
Cmα = -0.629 < 0
であるので、迎角静安定を有する。
6.3 垂直尾翼
6.3.1 面積
垂直尾翼容積は次のように表される。
begin{equation}
V_v =S_v l_v/(bS)
end{equation}
lv : テールモーメントアーム
Sv : 垂直尾翼面積
S : 主翼面積
b : 主翼スパン
垂直尾翼面積を大きく取り風見安定が強くなりすぎるとスパイラルモード不安定になってしまう。1996年度の大会でみられたスパイラルモードの不安定性を改善するために、昨年度の機体では Vv=0.010であった。今回もこの値を採用し、 lv=5.3(m)として
Sv=1.53(m2)
6.3.2 翼形
例年試験飛行ではラダーの効きが不足気味であることが多かった。対策としては、尾翼面積を大きく取るか、 CLmaxの大きい翼形を使うことである。尾翼面積を大きく取りすぎると風見安定が強くなりすぎるので、 CLmaxの大きい翼厚の厚い翼形を使うことにする。このため昨年までのNACA0009からNACA0012に変更する。NACA0012の2次元翼データは付録Aに収録した。
6.3.3 平面形
テイクオフ時に垂直尾翼がフラットホームに接触しないように、胴体より下側は短くした。
6.4 抵抗推算
6.4.1 有害抵抗係数の推算
各部分の抵抗係数を定義する基準面積をSπとし、 Sπを用いたときの抵抗係数を CDπとすると、
begin{equation}
C_{D_0} = (1+k) frac{sum C_{D_pi} cdot S_pi }{S}
end{equation}
kは干渉等に対する補正係数で、今回はk = 0.1とする。以下に SπとCDπの関係を示す。
Sπ(m2) | CDπ | |
主翼 | 28.0 | 0.001 + CDw |
水平尾翼 | 1.89 | 0.008 |
垂直尾翼 | 1.53 | 0.008 |
胴体 | 0.0078 | 0.1 |
フェアリング | 1.26 | 0.1 |
キングポスト | 0.05 | 0.1 |
ワイヤー | 0.06 | 1.5 |
DAE11の場合、CL = 1.1のとき、主翼抵抗係数 CDw = 0.0095 であるから、
CD0 = 0.02134
となる。
6.4.2 誘導抵抗係数の推算
誘導抵抗係数CDiは次式で与えられる。
begin{equation}
C_{D_i} = frac{{C_L}^2}{e pi AR_{eh}}
end{equation}
ただし、eは飛行機効率、AReh は地面効果を考慮したアスペクト比で次のように表される。
begin{equation}
AR_{eh} = frac{1 + 33 (h/b)^{1.5}}{33 (h/b)^{1.5}} cdot AR
end{equation}
e = 0.8としてAR=30、 b = 29 (m2)、CL = 1.1を代入すると、次のようになる。
高度h (m) | AReh | 誘導抵抗係数CDi |
10 | 34.49 | 0.0140 |
9 | 35.26 | 0.0137 |
8 | 36.27 | 0.0133 |
7 | 37.67 | 0.0128 |
6 | 39.66 | 0.0121 |
5 | 42.70 | 0.0113 |
4 | 47.75 | 0.0101 |
3 | 57.32 | 0.0084 |
2 | 80.19 | 0.0060 |
6.5 必要パワ
推力をT、抵抗をD、機速をv、必要パワをPとすると、
begin{equation}
P = Tv = Dv = frac{1}{2}rho v^2 SC_D cdot v = frac{1}{2} rho v^3 S(C_{D_0}+C_{D_i})
end{equation}
飛行高度と必要パワの関係を下図に示す。
6.6 安定微係数の推算
「航空機力学入門」(加藤寛一郎他著・東京大学出版会)の推算公式により、安定軸まわりの安定微係数を推算した。 工学部航空宇宙工学科鈴木研究室にあるフライトシミュレータにここで求めた安定微係数を入力し、操縦性の確認を行った。
6.6.1 慣性モーメント
機体の重量分布を、図のように約1300個の質点を分布させて近似した。計算に用いた座標系は胴体パイプの先端を原点とし、前方向にx軸、右翼スパン方向にy軸、鉛直下向きにz軸をとった。慣性モーメントは次の通り推算された。
Ixx = 1729 kg m2, Iyy = 117 kg m2, Izz = 1762 kg m2, Ixy = 15 kg m2
6.6.2 縦の安定微係数
無次元
有次元
6.6.3 横の安定微係数
無次元
有次元
6.6.4 primed derivative
6.6.5 運動の例
プラットホームから設計速度の75%で出た場合の運動を計算すると以下のようになった。エレベーターとラダーは中立位置にしたままとした。