第7章 プロペラ

7.1 プロペラブレードの形状設計

5年前のメンバーが開発し、使用してきた計算プログラムを用いて諸元値を決定した。このプログラムは、後流中の渦による誘起速度を求め、それを利用してブレード上の循環分布を最適化するものであり、回転軸付近に翼がない部分が存在する場合も考慮されている。

設計は、低レイノルズ数領域での使用であることを念頭に行った。一般に、翼面上のレイノルズ数が1.0~2.0×105を下回るあたりから気流の剥離が起こるとされている。よって本設計においては、翼面上のレイノルズ数が最低でも1.0×105のレベルを確保できるようにした。

昨年の設計との最大の相違点は、プロペラ回転数を2.33(rps)から2.5(rps)に変更したことである。これは、後述するように、ブレードのたわみ対策を施すことによる重量増加を緩和するため、翼弦長が過大になるのを防ぎ、かつレイノルズ数を確保することをねらっての変更である。

逆に言えば、この点を除いて大きな設計の変更はない。これは、昨年の飛行である程度の性能が実証されたため、プロペラに関しては、大幅な改良を試みるよりは細かいところを詰めていって無駄を省こうというスタンスをとっているためである。そのため、設計点での揚力係数を抑えて失速特性を高めるといった基本姿勢は、昨年のものを踏襲している。

以下に、前述のプログラムを用いた計算結果を記す。

設計推力     = 30.0 [N]

入力パワ     = 260 [W]

プロペラ回転数  = 2.50 [rps]

巡航速度     = 7.50 [m/s]

ブレード枚数   = 2

プロペラ半径   = 1.55 [m]

プロペラ内部半径 = 0.05 [m]

ブレード分割数  = 15

空気密度     = 1.176 [kg/m^3]

プロペラ迎角   = 1.0 [deg]

設計揚力係数   = 0.5

設計抗力係数   = 0.02

半径(m) 翼弦長(m) 取付角(deg) 入射角(deg) 循環(m^2/s) 局所効率 Re数
0.10 0.1193 79.75 78.8 0.23 0.7524 6.2×10^4
0.20 0.1803 69.31 68.3 0.37 0.8405 1.0×10^5
0.30 0.2189 60.18 59.2 0.48 0.8651 1.3×10^5
0.40 0.2391 52.50 51.5 0.58 0.8739 1.6×10^5
0.50 0.2459 46.17 45.2 0.67 0.8764 1.8×10^5
0.60 0.2435 40.97 40.0 0.73 0.8758 1.9×10^5
0.70 0.2353 36.69 35.7 0.78 0.8735 2.1×10^5
0.80 0.2234 33.15 32.2 0.82 0.8702 2.2×10^5
0.90 0.2090 30.20 29.2 0.84 0.8662 2.2×10^5
1.0 0.1927 27.70 26.7 0.84 0.8618 2.2×10^5
1.1 0.1748 25.57 24.6 0.82 0.8571 2.2×10^5
1.2 0.1551 23.74 22.7 0.79 0.8522 2.1×10^5
1.3 0.1329 22.15 21.1 0.72 0.8471 1.9×10^5
1.4 0.1058 20.76 19.8 0.61 0.8420 1.6×10^5
1.5 0.0699 19.53 18.5 0.43 0.8368 1.1×10^5

推力     = 29.72 [N]

トルク    = 16.55 [Nm]

プロペラ効率 = 0.8573

また、プロペラブレードの翼弦長分布は次のグラフのようになる。

pcood

なお、翼型はDAE51を使用する。

7.2 プロペラの製作法

昨年同様、主桁に朴の木(ほおのき)のリブを100mm間隔で通し、前縁、後縁をそれぞれスタイロフオームとバルサ材で形成して、表面にバルサ板をはる方法を採る。ブレード表面は、剛性を持たせるためにエポキシ系樹脂を塗ったのちサーフェイサーで滑らかにし、塗装またはフイルムを貼りつけて仕上げる。

製作法で昨年と大きく異なるのは、主桁の材質である。

昨年は翼根からスキーのカーボンストックを用い、長さが足りないところはアルミ中空棒で補うといった方法をとった。しかし、ストックの曲げ剛性が不足気味で、推力によってブレードが前方に大きく反ってしまった。これは強度に対する不安のみならず効率の低下も招き、今年の設計における課題になっていた。

そこで今年は、曲げモーメントが最大となる翼根付近の主桁をアルミ中実棒に変更し、曲げ剛性の改善をはかることにした。力ーボンストックの荷重試験を行って縦弾性係数を求め、主桁を片持ち梁と仮定してたわみを推算したところ、翼根から 0.2R付近までをアルミ中実棒にすることにより、翼端のたわみを約70%改善できることが分かった。この変更により、より設計に忠実な性能を発揮できるものと考える。

プロペラのセッティング

プロペラの性能は迎角に非常に敏感であるため、今年も昨年同様、ネジによる迎角の微調整が左右独立に可能な取付金具を用いる。飛行中のピッチ変更はできないため、離陸時に要求されるトルクは大きくなるが、速やかな離陸および定常飛行への移行によって解決できる。

また、2枚のブレードの、製作上の誤差による重量差に起因する振動については、バランスウェイトを用いて抑えることにする。

前の章 目次に戻る 次の章