第9章 強度計算

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9.1 荷重倍数の計算

巡航時において、機体にかかる揚力と重力は釣り合いを保っているが、引き起こし時には揚力が重力を上回るようになる。強度計算において、この揚力の変化は無視できない。そこで、揚力と重力との比を荷重倍数と定義して用いることにする。荷重倍数nは引き起こし終了時の最低高度において、最大である。機体重量をW、速度をVとすると、垂直方向の力の釣り合いを考えて、

begin{equation}

L = W + frac{WV^2}{gr}

end{equation}

荷重倍数nは、

begin{equation}

n = frac{L}{W} = 1+frac{v^2}{gr}

end{equation}

引き起こし速度を半経験的に8.24(m/s)として、

引き起こし半径r(m) 荷重倍数n
8 1.866
6 2.155

となり、引き起こし半径は6(m)が限界であり、荷重倍数の最大値nmaxは

nmax = 2.155

として考えることにする。

9.2 主翼の捻りに対する対策

主翼の強度計算において、捻りは最も重要であるといっても過言ではない。私たちの機体の主翼は主桁を翼型の風圧中心付近に通しているので、水平巡航時において捻りモーメントはほとんど発生しない。しかし、水平降下時での進行方向への力の発生により、捻りモーメントは誘起されてしまい、さらに製作精度を考えると水平巡航時においても捻りモーメントはゼロであるとは言い難く、捻りに対する対策として、主翼にリヤスパーを取りつけることにする。

9.3 強度計算

主翼の桁は全部で9本のカーボンパイプから構成される。パイプのスペックは以下の通りである。

中央翼 内翼 外翼 最外翼 翼端
長さ[mm] 1800 5200 4400 4200 600
内径[mm] 70 76-65 69-49 55-37 20
肉厚[mm] 2.0 1.0 1.0 0.6 0.6
繊維 HR40 HR40 HR40 HR40 HR40
本数 1 2 2 2 2

重なり部分は全て200mmとしてつなぎ合わせる。また、主翼の中央から7.8mの位置に張線を張る。

強度計算は、主翼のスパン方向のCl分布、重量分布を考慮して主翼のたわみを計算し、強度を確認した。なお、ワイヤーの長さは、ワイヤー取付部で主翼が200mmたわむように設定してある。

また、張線をつけることで生じる圧縮力について計算すると、張線取り付け部において、軸圧縮力Nは138kgfである。このとき圧縮応力は、断面二次モーメントI、断面積A、外径Dとして

σ = 0.5 M × D / I + N / A = 117.6 [MPa]

荷重倍数をn = 2.155として、

σ = 253.4 [MPa]

となり、許容応力内であるので、主翼の強度は十分である。

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