第5章 安全対策

「チャレンジ」と「無謀」とは似ているようで実は全く性格を異にするものである。「大空へのチャレンジ」が実はパイロットおよびメンバーの安全を犠牲にして成り立っているとすれは、それは全く愚かな、ただの「無謀」でしかない。重量軽減を重要視するあまり、機体の安全が保てなくなるようなことを避けるために、今年の機体では設計書段階で必要とされる安全対策について十分な考慮がなされている。その意味からも、今年の機体はパイロットの安全を第一に考えて設計、製作されていると言うことができる。

当日の琵琶湖の飛行状況において、最も人員に対する事故が発生し易いのは離陸時と着水時であり、このそれぞれについて起こり得る車故の形態を考え、それに対する対策を講じていく。

5.1 離陸時

離陸時に考えられる事故の形態とそれに対する対策を以下に列挙する。

5.1.1 離陸発進時に張線に地上要員が引っかかることによるケガ、および機体姿勢が急変することによる墜落

離陸発進時には、地上要員が張線の前方にいないことを確認すると同時に、張線を赤又は黄色の警戒色に塗装してメンバーの注意をひくようにする。また、テストフライトにて、地上要員の訓練も十分に行う予定である。

5.1.2 プラットホームから地上要員の転落

フレームのみを実機通りに再現した模型を作り、グラウンド上に実際のプラットホームと同じ大きさのラインを引き、これを用いて離陸時の訓練を行なう。

5.2 巡航時

定常飛行に移ることができれば、当座の危険は少なくなる。しかし、この状懇でも事故は皆無とはいえない。不意の突風による失速や、突然の空中分解による堕落の可能性がわずかでも考えられる以上、飛行高度は発進時の10m前後を維持し、あまり高度を上げ過ぎないようにする。パイロットへの連絡はモータポートから無線を用いて行ない、高度の判断は機体の全長が約8mであることを利用して目測で行なうが、危険高度の判断にはこの程度で十分である。

5.3 着水時

着水時における危険は、着水時の機体の状態によっても大きく変化する。

5.3.1 巡航状態からの自然な着水時

このときは着水の衝撃は小さく、問題になるのは水の事故のみである。コックピットからの脱出はフェアリングを破壊して行なうが、コックピットの材質は骨組みが発泡スチロールの周囲をバルサで補強したもので、その他の外皮はフィルム、およびスチレンペーパーであるので、破壊時に鋭利な角でパイロットが傷つくことは皆無である。レスキュー隊はコックピットフェアリングを任意の場所で破壊し、速やかにパイロットを救出できる構造になっている。脱出時の障害になるものは主翼を支える張線のみであるが、これは前述のように塗装を施し、本数も左右各1本であるため、絡まるなどの心配はない。また、パイロットはトレーニングに水泳も採り入れるほどで、当日の大会当日に必要とされる泳力には全く問題はない。

5.3.2 正面からのハードな着水時

パイロットが最も危険な状態におかれるのはこの状態の時である。この状態は失速による急降下、およひ機体構造の破壊による空中分解時に発生する。これに対する対策は、パイロットの外傷に対してはまず、コックピット各部に鋭利な突起を作らないようにする。ネジ・ボルト・その他金属部品の使用はできるだけ避け、やむを得ず使用する個所には必ず発泡スチロール等のカバーをつける。CFRPパイプが折れたときに生じる鋭利な切り口によってパイロットが怪我しないように、各パイプにはエスレンシート等を巻きつける。

次に衝撃に対しては、まずパイロットは飛行時にヘルメットを着用し、着水時の衝撃に備える。また、パイロット前部のカーボンパイプには発泡スチロールのパッドを取り付けて、パイロットが激突しても最小限の衝撃になるようにする。比較的高速で回転しているプロペラについては、材質が軽量であるために着水時に水の抵抗で瞬時に回転を停止するためパイロットに激突して障害になることはなく、またプロペラ軸に使用されているスキーストックが折れた場合でも、鋭利な断面が生じることはない。さらに、衝撃で気を失った場合でも、巡航状態の場合と同様に、レスキューは任意の部分でコックピットを破壊し、パイロットを救出できるため、万一の場合でもパイロットが溺れる心配はない。

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