13第4,5回試験飛行

5/24(金)~26(日)にかけ、13年度第4回,第5回目の試験飛行を行いましたので詳細を報告いたします。


5/25(土)  1日目(第4回)

前回の試験飛行での事故後の各種安全点検、修理により中止も検討されていましたが、可能な限りの対策と準備は完了したと判断したので、5/24~26に二日連続で試験飛行を行いました。

胴体・コックピットに対し翼胴接合部及び翼全体がロールしてしまう対策として、U字マウントを立体的に拘束するため前部胴体桁にU字マウントが丁度入るようなボックス構造を接着し今回のTFに臨みました。また、リアスパマウントの接着部の強度は追加の構造材やクロスで大幅に強化し、テストピースの荷重試験で強度が増したことを確認しました。

これまでCFRPと木材のサンドイッチ材を元に作成していたリアスパ-胴体接合、迎角調整用の「おにぎり」もアルミ製に変更し、翼がコックピットに対して回転しようとする際に生じる力に対する剛性を高めました。

尚、改修した翼同マウントは本郷で翼胴接合を行う時間が無かったため、今回の試験飛行の組立の集合前にコックピットと中央翼で接合確認を行いました。その際ボックス構造と中央翼桁側のマウントが1mmほど干渉したので、翼桁側のマウントを紙ヤスリにてやすり、再接合したところ無事に接合することができました。これにより組立前の集合時間が20分程遅れてしまいました。この処置の必要性は出発前に想定されていましたが、問題が発生しても滑空場で対処できると考え、試験飛行を一回遅らせる程ではないと判断しました。

その後、組立は順調に終了しましたが、3:30頃に行った駆動試験中プロペラから異音が発生し、チェックを行ったところプロペラの外皮の継目で亀裂が入っており、テープで補修して駆動試験を行った結果異音は収まりました。そのため、フライト一本目の開始は5時55分と予定より1時間以上遅くなってしまいました。日の出の数十分前から5時頃までは安定して微風でフライトを行うには絶好の条件だったので、この時間を有益に使えなかったことは悔やまれます。今回の翼胴マウント及びプロペラのトラブルは事前に大学で接合試験、駆動試験を行えば未然に防げたことであり、作業日程の甘さは反省していかねばなりません。

尚、前回の事故に対して補修及び補強を施したため、重心位置が以前に比べて前後することが懸念されましたが、重心測定の結果位置の変化はほぼないと判明しました。その為、翼位置は前回の位置に設定し挙動を見ていくことにしました。

土曜日は時間によって吹く強い東風を除けば、北からの微風がずっと続いていたので、フライトは毎回滑走路中間点から北向きに飛ばしました。


1本目:走行試験
最大機速は8.2m/s、 回転数85で車輪は「迎角+1.8°」の物、尾翼はアップトリム1°で行いました。
プッシャーの力のバランスと風によって右にそれ始めたのでストップをすぐにかけました。

2本目:ジャンプ試験
最大機速は8.0m/s、 回転数は80で車輪及びトリムは変更しませんでした。
エレベーターによるインパルスは入れませんでしたが、風に煽られたためラダーとエルロンの操舵量は若干大めでした。尾翼トリムの影響により後輪は浮上が確認されたものの、胴体が水平に至るほどではありませんでした。
後輪浮上後2秒でストップをかけました。この滑走と重心測定の結果から、まだ十分前に重心位置があり、後ろに動かす余裕があると判断しました。

3本目:ジャンプ試験
最大機速は8.0m/s、 回転数80程でした。
飛行中機体の過剰なヨーを察知したスタメンが後部支柱を掴んだのでストップをかけました。また、滑走後半でチェーンが外れてしまい十分に加速できませんでした。

4本目:ジャンプ試験
飛ばず前に、スタメンがロガーの記録用SDカードを入れ忘れたと誤解し一度ストップがかかりました。テストフライト終了後に確認するとログが途中で途切れていることが判明しました。最大は機速7.0~8.0(予測) で回転数75以上と思われます。右にそれたのは風とプッシャーの癖が原因と思われます。


4本目が終わった時点で東側からの強風(風速7m/sを観測)が止まない状況が続き、風を待ってもフライトする時間がないと見込まれたため、機体の風上に機体運搬用のトラックを配置し風除けしつつ、撤収しました。撤収時も強風が収まらず、現役メンバーにも人的余裕が無かったため、キャリアの運搬や保持をOBさんに手伝ってもらう事態になってしまい誠に恐縮です。

滑走時に翼持ち担当者が右にロールする力を常に感じたとの報告があり、翼胴が最初から若干右にロールしていたことが原因として疑われました。

プロペラについては2週後を目処に外皮の強度面を見直した2号ペラの完成を目指します。

5/26(日)  2日目(第5回)

2日目は部員の疲労を考慮し、また1日目に行った重心測定では今までと比べ、特に大きな変化は見られなかったので、重心測定を省略し、組立開始時刻を遅らせました。1日目の電装ログでしばしばフライト後半が記録されていないという問題がありましたが、その原因はSDカードにデータの書き込みが終了する前にすぐにカードを抜いてしまっていたことであると判明しました。以降SDカードの抜くタイミングを遅らせることによりこの問題は解決しました。

組立後のプロペラ回転試験で、異音は確認されませんでしたが、1日目にはなかった新たな表面のヒビが確認されたため、1日目と同じように接着剤とフィルムテープで補強を施しました。

2日目は800m滑走路の北半分をTeam ‘F’, 中間帯にエアロセプシーが記録飛行待機、南側半分をF-tecとWASAが交互に使用するという非常に込み合った使用状況でした。

以下で詳細なフライト内容を記載していきます。なお、対気速度と対地速度は計器の出した数値をそのまま記載していますが、対地速度は対気速度に比べて信頼性がありません。


1本目:ジャンプ試験
風は北側から吹いていたため、5本目までは滑走路の南端から北向きに飛ばしました。1日目の2本目のフライトから、機体は依然として安定側に入っていると判断したため、主翼を1日目よりさらに15㎜(4月の組み立て試験時より45㎜)前に出し、エレベーターのトリムは0度としました。回転数は最大100、対気速度は8m/s、対地速度は9m/sでした。安定して直線的に滑走し、前輪は浮かずに後輪がわずかに浮きました。
https://www.youtube.com/watch?v=CYqMLximEz
2本目:ジャンプ試験
2本目はエレベーターのトリムを1度アップに入れました。回転数は最大98、対気速度は8m/s、対地速度は9.5m/sでした。
滑走路の左にそれたためストップをかけましたが、その際にフェアリングのドアが外れて落下しました。
ドアはマジックテープでフェアリングに留めてありましたが、3本目以降は、これに加えて養生テープでドアを固定しました。

頭下げの姿勢で後輪が数回わずかに浮いてバウンドするような挙動を見せたので、3本目はエレベーターのトリムを1度増やし、アップに2度としました。

3本目:ジャンプ試験
回転数は98、対気速度は最大8m/s、対地速度は最大10m/s、尾翼トリムはアップに2度で、インパルスを使用しました。
結果、インパルス入力直後、後輪浮上前に前輪から頭上げに両輪が浮上しました。浮上後、パイロットがインパルスを解除し、尾翼初期トリム位置に戻すと、直ぐに着地しました。結果、まだ頭下げモーメントが強く、重心は十分安定側であると確認でき、まだ翼位置を前へ移動する余裕があることも確認できました。

4本目:ジャンプ試験
回転数は最大95程、対気速度は最大7m/s、対地は8m/s、尾翼トリムは1度上げてアップに3度、翼位置は引き続き45mm前でインパルスを使用しました。
前回のフライトでストップのタイミングが少し遅れ、停止に時間がかかったことから、今回はパイロットにインパルスを早めに入れる様指示したところ、操舵に意識が行き過ぎ、ペダルを漕ぐことに集中できずに十分な機速と推力を得られませんでした。

5本目:ジャンプ試験
4本目の後、代表・設計・パイロットの3人で話し合った結果、翼位置を更に10mm前に出し、トリムを1.6度に変更することにしました。20分弱かけて設定の変更を行い、そのあと他チームとの兼ね合いで30分ほど待機し、フライトを開始しました。5本目のフライトは、南東から2m/sの背風の状況でしたが、他チームとの配置転換の手間や残り時間を考慮し、4本目までと同様、滑走路南側より北向きに機体を飛ばしました。フライト内容としては、滑走時に右側にヨーイングしていったためストップをかけました。またその際、右からの横風、草地と滑走路の境界でのバウンド、ラダーを左に切ったことなどが原因で左に大きくロールし、左翼を激しく擦り、また左最外翼を支点にほぼ180°回転しました。最大回転数は100、最大対気速度8.1m/s,対地9.2m/sでした。

幸いグランドクルー・パイロットともにけがはありませんでした。

6本目:ジャンプ試験
設定は5本目と同じでした。5本目から変わらず南東からの風があったため、機体を滑走路中央まで移動し、南向きに飛ばしましたが、機体が左にそれたためすぐにストップをかけました。原因としては、風による風見とスタメンの習熟が問題であると思われます。回転数95、機速対気8m/s、対地10m/sでした。

7本目:ジャンプ試験
6本目の後、機体を滑走路400mラインまで戻し、撤収時間が迫っていたため、すぐに南に向け発進しました。6本目同様、滑走時に左にそれていったため、ストップをかけました。また、ストッパーが力を下向きに入れすぎたため、キャッチ時に前輪が浮きました。

https://www.youtube.com/watch?v=dt0IFN6zW8k

今回のテストフライトで、以前からOBの方々から指摘されていた、指揮や情報伝達の不備による時間のロスに改善が見られました。

なお、機体が発進直後に大きくロールやヨーしてしまう主原因として風が挙げられますが、プッシャーやパイロットの修練不足も影響しています。回転数や機速のログ、機体の挙動から判断して、プッシャーは機体を離す直前まで一瞬でも長く機体をまっすぐ保つように努め、地上で離陸速度になるべく早く達せるように、パイロットは操舵だけでなく、回転数を落とさないことにも注意する必要があると結論付けました。

日曜日の5本目で地面に擦った翼の損傷は軽微で、翼胴マウントにも異常は見られなかったため、今週末も試験飛行を実施いたします。

次回のテストフライトのセッティングは2日目の最終セッティングを維持し、インパルスありのジャンプ試験を1本目に行う予定です。


今回の試験飛行動画はこちらにアップロードされています。

第4回試験飛行(1日目)
第5回試験飛行(2日目)