第1回試験飛行(6/8)

!第1回テストフライト結果

去る2002年6月8日に、静岡県の富士川滑空場でテストフライトを行いました。前回の試験走行に引き続き、主翼のバランス等とともに完成度を測るのが目的でした。また、重心の測定も行いました。

しかし残念ながら、プロペラ取り付け部に問題があり、プロペラを確実に軸に固定することができなかったために、地上から人が胴体を押しての試験となりました(飛行は不可能となり、地上走行による試験としました)。また、操舵系統にも問題があり、垂直尾翼を固定しての試験となりました。

実際に人が押しての走行をはじめたところ、左に若干傾いて10mほど進み、主翼が揚力によって上向きに大きく反り始めたところで、コックピットと主翼下側を結ぶワイヤーの主翼下取り付け部の金具が破損し(下写真)、直ちに試験飛行中止となりました。上の写真はその直前の瞬間を撮影したものです。

以下、パート別の報告です。

プロペラ班

①トラブルの内容

まず結論から述べると、プロペラブレードとハブの結合に問題があったのである。もともと、ハブのブレード取り付け穴の内径は20mm、それに対しブレードの根元に使用するステンレスパイプが外径19mmのものしか規格品が無く、間に0.4mmのアルミ板をエポキシ接着剤で接着して挟んでいた。この結合をハブの上から、ホース留め金具で抑えて固定していたのである。

ところが、ブレードとハブを何度も出し入れしているうちに、ブレード付け根部に巻いたアルミ板の切れ目(継ぎ目)がカッターの刃の役割を果たし、ハブの内部が削られて消耗しブレード根元を抑えきれなくなってしまっていた。さらに、そもそもホース留めのような金具では線的にしか抑えられず、ハブに入れられたスリットをつぶすほどの力にはならないことも、後で判った。

この結果、ブレードが手で回せる状態になってしまい、無理にまわすとブレードの取り付け角が変わるだけでなくブレードごと飛んでしまう可能性もあったため、プロペラの回転を取り止めることとなった。

②対策

2つの対策を記す。一つは、1本目のプロペラへの応急処置、二つ目は現在製作中のプロペラへの対策である。

1本目への対策であるが、これは生産研試作工場の方に相談して次のような対策を施した。各ブレードの根元とハブにM4のボルト穴を開け(但し、取り付け角1度のところであわせる)、さらにブレードの根元がステンレスパイプであるが中をジュラルミンの棒で埋めた。この穴にM4のボルトを締めて、ハブに開けられたスリットをつぶし、ハブとブレード根元を密着させることで固定する。ジュラルミン棒で中を埋めたのは、ステンレスパイプがつぶれてしまわないよう念のためである。

2本目は、根元部分とハブをセットで生産研試作工場の方に製作をお願いした。きっちりとはめあわせできるように製作してもらえば、1本目のようなトラブルはおきない。ただ、ホース留めによる固定は止めにして、新たな固定方法を考案した。これは、ハブの方のスリットは無くし、代わりに2つ直角にボルト穴をあけるもので、2方向にボルトで締め付けることでブレード根元をハブ穴内側へ面的に押さえつけ、摩擦を大きくして保持力を十分大きなものとできる。

計測班

今回の試験飛行では、前回試験走行で動作の不安定だった回路を新規に作り直し、対気速度を測定、EEPROMに記録しました。最高速度は5.7m/sで、これがワイヤー取り付け部の金具が破損した瞬間の速度と思われます。

EEPROMに記録されたデータの可視化(グラフ化)を行いました。時刻は計測基板の電源を入れてからの秒数であり、絶対的な数値は意味を持ちません。 t=117でワイヤー取り付け部が破損したようです。ただし、今回の試験飛行では動力源が人力(プロペラではなく地上人員による胴体押し)であったため、あまり有意義なデータとは考えていません。

今後の課題は、ペダルの回転数を計測、表示することで、基本システムは完成しており、計測用のソフトウェアの完成を待つのみの段階となっています。また 006P電池から5Vを生成する7805(三端子レギュレータ)の発熱が著しく、電池の消耗も激しいため、省電力化の必要も感じていますが、問題になるレベルではないため、主翼班への協力(作業の手伝い)を優先しようと考えています。

主翼班

①破損した張線取り付け金具について

破損した部分の金具を含め、翼に接着してある張線取り付け金具は1mm厚のアルミ板を使っていた。今回の試験飛行でのトラブルをふまえて材料、構造を見直し、新しい金具を製作、接着した。具体的には1.5mm厚のジュラルミン板を用い、穴を開ける部分はそれを2枚接着して厚みを2倍にすることで対策した。今回破損したのは翼の下側の金具であったが、接着の都合で翼の上側の張線取り付け金具も同様に作り直した。またその他の張線取り付け部も見直し、コックピット後ろ側支柱のキャスター部についていた張線取り付け金具は去年と同じものなので材料が(アルミかジュラルミンか)はっきりと分からなかったため、同様に作り直した。

②次回までの改善点

張線取り付け部付近のエスレンシート、マイラーフィルムに開ける穴をできるだけ小さくし、またこの二つの穴が直結しないように翼の内部に壁を設ける。また、各翼の接合部付近は隙間が十数cm空いているので、これを埋めるものを作る。これは翼型をしたブロックのようなものをはめ込む形になるとおもわれる。以上の2点によって翼効率の低下を防ぐ。

操舵班(6/23実施の操舵試験結果報告を含む)

①操舵の尾翼が動かないというトラブルが起こった原因について。

今年は初めての内蔵式リンケージワイヤを採用したので、この原因についてはじめは当惑したがすぐに原因が判明したので報告します。まず、後部胴体、コックピット間でワイヤを切り離す必要があったため後部胴体内に4本のワイヤ(エレベータ用×2、ラダー用×2)がたるんだ状態でおいていたが、そのためにワイヤ同士がからまってしまい、動かないということになっていた。また、ワイヤをつなぐためにかしめていた部分のロックが後部胴体内のプーリーにぶつかっていたために動きが悪くなっていた。トラブルの要因としては、前者の影響が大きいと考えられる。

②エレベーターチューブについて。

今年の機体では、駆動のテンショナーがコックピットの操縦桿右下にきているため、エレベーターのリンケージワイヤに対しワイヤチューブを用いている。このワイヤチューブの固定が完全には固定できていなかったため、リンケージワイヤの経路長が変わってしまい、操縦性に著しい影響をあたえていた。
操舵試験の結果
今回の操舵試験の目的は次の二点であった。駆動、プロペラ試験も同時に行った。

!①組み立て後の操縦性能の確認。

!②組み立てにかかる時間の短縮。

①については、前述の問題に対処して実際に試験飛行、本番前に行う準備をして臨んだところ試験飛行で見られた問題はすべて解消されていた。

②については、コックピットと胴体の接続、尾翼の取り付け、リンケージ調整を含めて1時間と、大幅な改善が見られた。人員に関しても飛行場で使うコックピット周り8人として行った。

新たに幾つかの改善個所が見つかったものの第二回試験飛行までには修復して臨むつもりです。

駆動班

その数日前の駆動試験で消えたと思っていたチェーン(スプロケットボックス~ペラシャフト)の歯飛びによる音なりが再び出てきた。原因は駆動試験のあとかなり長い間チェーンにテンションのかかったまま放置してしまっていたことでチェーンが伸びてしまったのではないかと考えられる。対策としては

!1.チェーンのリンク数を減らす

!2.テンショナーを可動式に改良する

といったことが挙げられる、応急処置として1.を行い、その次の試験飛行までには可動式のテンショナーを完成させることにした。